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2016.01.27

事業の整理と資産の処分

経営者の高齢化、経営不振、後継者不在等の理由で、自主廃業される中小企業は年々増加しています。自主廃業にあたっては、保有資産をどのように処分するかで頭を悩ませるケースも少なくありません。

今回は、GS事業を営んでいる事業者さんが自主廃業をするにあたって、保有資産をどのような形で処分するのが得策であるかを検討してみます。GSは、不動産(土地・建物)、構築物(スタンド施設など)、タンク・給油機・洗車機などの動産で構成されています。

これらの資産を処分する方法としては、①別のGS事業者に資産をそのまま引き継いでもらう方法と、②構成資産をばら売りして処分する方法の2つが考えられます。

GSは車両通行量が多い幹線道路沿いに立地しているのが一般的なので、土地の利用方法としてはファミレスやコンビニなどいわゆる沿道サービス施設として活用することが可能です。GS業界は高齢化や若者の車離れなどの影響でガソリン需要が減少しているため、廃業や撤退が相次いでいる不況業種です。このため、沿道サービス施設の中でも利益率は低く、土地価格に見合う収益をあげることは難しい状況です。このような場合、GSに使用されている土地(建付地)の価値は、更地の価値に対して建付減価が発生していることになります。ここでは、②更地の価値を100、①GS建付地の価値を50と仮定します。


建物や構築物は、①GSとして継続使用する場合は価値がありますが、②個別にバラして処分する場合は、廃材としての価値しかなくむしろ撤去費用分だけマイナスです。ここでは、①の場合の価値を20、②の場合の価値は▲10とします。

動産も、建物等と同様に①継続使用であれば価値がありますが、②の場合は総じて販売可能価格は低廉であり、地下タンクのように再販が困難で撤去費用が必要なものもあります。ここでは、①の場合の価値を10、②の場合の価値を▲5とします。

これらを考慮しますと、①の場合の価値は80(=50+20+10)、②の場合の価値は85(=100-10-5)となりました。このケースでは、GS事業者に資産を引き継いでもらうよりも、価値の高い土地(更地)目当ての買い手に資産を売却する方が、処分方法としては適当という結論になります。

弊社では、トータルアセットコンサルティング業務(不動産・動産等の企業資産一括評価)を行っていますので、様々なシミュレーションに基づく価値算定を行うことが可能です。資産の活用・処分等をご検討の場合は、資産評価の専門家集団である弊社までご相談ください。

2016.01.18

機械設備の評価とIoT

IoTという言葉をご存知でしょうか?

IoT(Internet of Things:インターネットオブシングス)とは「モノのインターネット」、つまりコンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在する様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり、相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うことをいいます。

例えば、自動車の位置情報をリアルタイムに集約して渋滞情報を配信するシステムや、人間の検針員に代わって電力メーターが電力会社と通信して電力使用量を申告するスマートメーター、大型の機械などにセンサーと通信機能を内蔵して稼働状況や故障箇所、交換が必要な部品などを製造元がリアルタイムに把握できるシステムなどが考案されています。

先日の日経新聞で、建設機械大手のコマツが、地形計測システムを搭載した油圧ショベルを開発し、慢性的な人手不足にあえぐ国内の土木建設現場の改革に挑んでいる記事が掲載されました。その記事によりますと、油圧ショベルに備え付けられたカメラで撮影された画像データがクラウドに送信され、1分もたたないうちに3次元データに加工されます。また、上空にはドローンが飛んでおり、十数分飛ぶ間に数百万カ所のポイントを測量し、わずか1日で現場の詳細な3次元データが完成します。

これにより、日々変化する現場の状況を反映した3次元データをもとに自動走行する建機が掘削などの土木工事を行います。クラウド上で管理する進捗状況はパソコンやスマートフォンで随時確認できるため、急な設計変更などにも迅速に対応できます。必要な土の量がどのくらいになるか、ダンプトラックの手配はどうすればいいかがすぐにわかり、建設現場の工程管理が工場と同じように簡単にできるようになります。このシステムを導入した現場では工期の短縮や人出の削減などで費用を2~3割削減する効果があったそうです。

技術革新の著しい機械設備の場合は、物理的にはまだまだ使用可能な状態であるにも関わらず、機能的陳腐化により経済価値が大きく下がるケースは珍しくありません。IoTによる機械設備の技術革新は、産業革命に匹敵するほどのインパクトがあるとも言われております。我々評価人は常に最新の機械設備の動向に関する情報を収集整理し、日々の業務にフィードバックするよう努めております。

2016.01.07

機械設備の評価~固定資産台帳の重要性~

機械設備の評価をご依頼いただいた場合、まずは依頼者の方に固定資産台帳の提供をお願いしています。固定資産台帳とは、固定資産をその取得から減価償却計算、売却や処分に至るまで、その経緯を個々の資産ごとに管理するための台帳をいいます。固定資産台帳には、資産の種類、資産の名称、取得年月、取得価格、減価償却方法、耐用年数、償却率、減価償却費、減価償却累計額、帳簿価額などが記載されています。

この固定資産台帳の記載内容の正確性が、評価の精度に大きく影響する場合があります。例えば、工場の機械設備一式を評価する場合、大量にある機械設備を一つ一つ確認していくことは、現実的ではありません。稼働中の工場の場合、我々評価人の実地調査に与えられる時間はせいぜい半日程度です。限られた時間の中で大量の機械設備をすべて照合していくことは困難です。実際の評価においては、事前に依頼者から提供された資産台帳を精査し、重要性の高い機械設備をピックアップしたうえで、それらを中心に確認作業を行っていきます。重要性の低い機械設備は、必ずしも現物確認をするわけではありませんので、資産台帳に不備が多ければ、評価の信頼性が損なわれることにもなりかねません。資産台帳に不備が多いと判断した場合には、評価依頼を謝絶するか、資産台帳の再整備をお願いすることになります。


また、実際に照合作業を行ってみると、廃棄若しくは更新された固定資産がそのまま台帳に記載されているケース、設置場所が変更されているにも関わらず台帳では変更されていないケース、大掛かりな更新・設置工事を行った際に複数の資産を区分けせずに一括計上しているケース、台帳上は不動産に含まれているが実際は動産であるケースなど、資産台帳の不備が頻繁に見受けられます。

固定資産台帳の誤りは、償却資産税の支払い額や減価償却額に影響を及ぼすのみならず、企業経営上の意思決定にも支障をきたす恐れがあります。また、台帳に不備が多い会社は、総じて経営状態が芳しくないようにも感じます。自社の固定資産台帳が適切に整備・管理されているか、年も改まったこの機会に一度見直しされては如何でしょうか。

2015.12.22

在庫の評価~ABLにおける価値概念~

今回は、在庫の評価において使用する価値概念について取り上げます。在庫評価において使用される価値概念には、公正市場価値(FMV)、通常清算価値(OLV)、強制清算価値(FLV)、スクラップ価値(SV)の4つがあります。また、OLVやFLVには、処分に要する時間やコストを考慮したNOLVやNFLVも併せて使用されます。なお、FMVとOLVには継続使用を前提とする場合もありますが、その話は後日の機会にご紹介いたします。

在庫評価の依頼目的として最も多いのは、ABL(売掛債権・動産担保融資)の評価です。ABLで最も重要な価値概念は、OLV(NOLV)です。OLVは、「売手が現状有姿で売却を余儀なくされる状態で、合理的な期間内に買手がつくことを想定した実現可能な売却価格」と定義されます。この評価においては、在庫のカテゴリーごと、品目ごとの売却を想定し、それぞれの在庫に応じた適切な売却期間を想定して価値を求めます。すなわち、OLVでは必ずしも在庫の一括処分を前提としているわけではなく、在庫の品目ごとに処分価値が最大化されるような方法をシミュレーションすることになります。

これに対して、FLVは、「売手が緊急に現状有姿で売却を余儀なくされる場合に、適切に管理指導された公売によって実現可能な総売却価格」と定義されます。この評価においては、在庫の一括処分を前提とした価値を求めます。一括処分を前提とした場合は、処分に要する時間や処分コストは少なくて済みますが、回収額そのものは相当低くなってしまいます。

一般的に、売れ筋で市場性の高い在庫については、セール販売等で処分した方が一括処分よりも高い回収額が実現できますので、処分に要する時間や処分コストを考慮しても、FLV(NFLV)よりも高い価値の実現が可能となります。担保回収の観点からは、回収額が最大化されるように行動することが求められますので、ABL評価で重視すべき価値は、FLV(NFLV)ではなく、OLV(NOLV)であり、ABL先進国アメリカの貸し手(レンダー)は、NOLVを最も重視しているわけです。

ABLの普及が遅れており、動産の中古市場が脆弱な日本においては、この種の概念に対する理解が不足しており、処分価値=一括売却と誤解されているケースが見受けられます。

ある評価会社では、処分価格の説明として、「買取会社および処分会社が一括して全商品を買い取った場合を想定して価格を算出。さらに、商品搬出等に係る概算経費を差し引いて処分価格を決定。」としています。この説明を見る限り、ここで求められる価値はNFLVに限りなく近いと思われます。

今回のお話しは、評価実例を用いてご説明した方がわかり易いと思いますので、またの機会に当ブログ欄で取り上げる予定です。担保価値の回収を最大化することを前提としたOLV(NOLV)を必要とするレンダーの皆様、事情があって保有在庫の処分を検討している事業者等の皆様は、資産評価の専門家であるASA国際資産評価士が多数在籍する弊社までご相談ください。

2015.12.15

中小企業の事業承継・廃業に係る資産評価

中小企業経営者の高齢化が進むとともに、事業承継問題がクローズアップされるようになってきました。中小企業の場合は、社長の経営手腕が会社の基盤となっていることが多く、後継者を選ぶことは簡単ではありません。また、多くの中小企業は経営が厳しい状況にありますので、事業継続を断念して廃業に至るケースも相当数見られます。ある調査によると廃業を選択した経営者の約7割が、事業承継を検討することなく廃業に至っているようです。

事業承継にあたっては、親族への承継を優先する経営者が一番多いのですが、その割合は年々低下しており、親族外承継やM&Aの占める割合が増加しているようです。

この背景には、少子化や職業選択の多様化により、事業を引き継ぐ意欲を持った後継者を、親族内で確保することが難しくなってきていることがあげられます。

中小企業の経営者が、事業承継・廃業に係る検討・選択を行うためには、その企業の持つ収益性や成長性、リスク、資産内容などを詳細かつ多角的に精査(デューデリジェンス)することが必要になります。

特に、中小企業の価値算定において中心的な手法と位置付けられている、時価純資産法(資産・負債の各項目について時価評価し、時価純資産を算出する)を適用することにより、債務超過か否か、株式価値(会社価値)の把握等が可能となり、廃業か事業承継かの選択、事業承継候補者への説明資料として利用することが可能となります。

弊社では、トータルアセットコンサルティング業務(不動産・動産等の企業資産一括評価)を行っていますので、個別資産のみならず企業資産の価値算定も取り扱っております。

そこでは、事業継続を前提とした資産価値の算定のみならず、会社を清算した場合の清算価値の算定も併せて行いますので、廃業か承継かを迷っておられる経営者の方には、その判断を行うための有用な検討材料をご提供することが可能です。事業承継問題に係る企業資産評価をご検討の方は、弊社までご相談ください。

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