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2015年11月

2015.11.25

MRJ初飛行とASA資産評価士

11月11日、三菱航空機の国産ジェット旅客機MRJの試験機が、およそ半世紀ぶりに日本の空を飛行した話がマスコミ等で大きな話題になりました。近中距離の移動に使用される旅客機市場で世界首位を狙っているとのことで、日本の製造業の技術力の高さをあらためて世界中に示してくれそうです。

航空機は、我々ASA資産評価士の評価対象の一つであり、ASAの資格講座(ME203)にも航空機の評価が題材として取り上げられています。日本は鉄道路線網が発達しており、航空機の保有数も少ないため、航空機の評価機会は滅多にありません。

日本で行われた航空機の評価の代表例としては、2010年に日本航空が、経営不振・債務超過を理由に会社更生法を申請し、株式会社企業再生支援機構をスポンサーに、経営再建の道を図ることになった時があげられます。

会社更生法の手続きの過程で、日本航空が保有する航空機の資産評価が必要になったのですが、当時、日本には航空機の評価を行うことができる評価人がいませんでした。このため、米国のASA資産評価士を日本に呼んで当該評価を行ったそうです。現在、日本にはASA認定の資産評価士が20名以上おりますので、今後、同様の事象が生じた場合には、日本のASA資産評価士が航空機の評価を行うことになるでしょう。

日本では不動産以外の資産評価が殆ど行われてこなかったこともあり、ASA認定の資産評価士の存在は殆ど知られておりませんが、世界の機械設備評価の分野では信頼性の高い資格者として広く認知され利用されています。

機械設備評価、動産評価に関するご相談は、資産評価の専門家である弊社所属のASA国際資産評価士までお問い合わせください。

2015.11.18

機械設備の評価~減価償却制度見直しの動き~

企業が機械装置を取得した場合、取得に要した費用を経費(減価償却費)として計上する主な方法としては、定額法と定率法の2つの方法があげられます。定額法は機械ごとに決まった耐用年数で、毎年同じ額を減価償却費として計上する方法で、法人税負担への影響も一定です。一方、定率法は費用計上していない残高に応じて毎年一定の割合で減価償却費を計上していく方法で、購入直後の法人税負担を軽くすることができます。

政府は、この減価償却制度の見直し(定率法の縮小・廃止をする案)を昨年から検討しております。その理由としては、初期の償却額が大きい定率法は所得操作の可能性を大きくする、IFRSの導入やグループ内会計の統一化を背景に償却制度を定額法に見直す動きが見られる、ドイツでは2008年法人税改革において定率法を廃止し定額法に一本化した、などがあげられています。

IFRS(国際財務報告基準)においては、減価償却の方法として、定額法、定率法、生産高比例法があげられていますが、方法の決定に当たっては、資産の将来の経済的便益が企業によって消費されると予測されるパターンを反映するものでなければならないとされています。したがって、初期に経済的便益が大きく消費されるような機械装置であれば、定率法を適用することはOKですが、多くの機械装置はそれに当てはまらないため、定額法を適用するケースが圧倒的に多いのです。IFRSが資産・負債アプローチに立脚した会計基準であることを考えれば、この決定方法の考え方は納得できます。

上記の見直し理由の一つに挙げられている、IFRS導入による定額法へ見直す動きは、IFRS適用企業の増加を受けて、財務上の要請から償却方法を見直す企業が増加していることを意味しているのです。

では、機械装置の評価、機械装置の公正市場価値の観点から、どちらの方法が望ましいかといえば、IFRSの考え方通りで、多くの場合は定率法よりは定額法ということになります。

但し、償却方法を定額法に変更しただけでは、公正市場価値の観点からはまだまだ不十分です。IFRSではそもそも耐用年数を使用が見込まれる期間で決定することを求めています。日本の税法では法定耐用年数(実際の使用年数よりも短いことが多い)が定められており、日本の会計基準も事実上税法に従うケースが多い状況です。償却方法がより現実の価値減少に類似する方法に変更されたからといっても、その基となる償却期間が法定耐用年数である限りは、帳簿価格が公正市場価値に近い数字を示しているとはいえません。

機械装置の価値を簿価で代用することが慣習的に行われてきた日本においては、機械装置の公正市場価値に関する認識が希薄であり、世界基準で見るとこの分野では完全な後進国であることは認めざるを得ません。

機械装置の評価が必要な場合、機械装置の公正市場価値を把握したい場合には、グローバルスタンダードな資産評価の専門家である弊社所属のASA国際資産評価士にご相談ください。

2015.11.11

太陽光発電所(メガソーラー)の評価~電力自由化に向けて~

最近、電力自由化の話題がマスコミ等でも取り上げられるようになってきました。現在、家庭に電気を販売できるのは、東京電力や関西電力など大手電力10社に限定され、各社が地域ごとに独占販売を行っています。一般家庭にとっては電力の購入に地域の大手電力以外の選択肢はなかったわけです。

2016年4月にこの仕組みが大きく変わります。8,000万件以上の家庭や商店が電力の購入先を自由に選べるようになります。自由化にあわせて電力小売りに参入する企業(新電力)は、電気料金を自由に設定できます。解放される市場規模は約7.5兆円と試算されており、既存の電力10社と参入企業(新電力)との間で熾烈な競争が始まろうとしています。

上記は家庭向けの話ですが、すでに企業向けなど大口の電力需要者については電力の自由化がされております。電力小売りに参入済みの新電力のうち、約8割が自前の発電所を保有しています。また、新規参入を予定している新電力の約7割が自前の発電所を既に確保しており電源の手当てを進めております。

これら新電力の電源調達手段として注目されているのが、太陽光発電所をはじめとした再生可能エネルギーです。特に太陽光発電所は、2012年にFIT(固定価格買取制度)が導入されて以降、急速にその数を増やしています。現在は、FITの問題ばかりが注目されておりますが、太陽光をはじめとした再生可能エネルギーは、電力自由化時代を支える貴重な電源としての役割が期待されているのです。

太陽光発電所は、主に、太陽電池モジュール、架台、PCSなどの機械設備で構成されており、資産の分類では、機械装置、動産になります。このうち、発電量が1,000kw以上のものをメガソーラーと呼び、10kw未満のものは住宅用太陽光に分類されます。

太陽光発電所、特にメガソーラーの評価ニーズは、融資を行う金融機関の担保価値把握、稼働中の発電施設を売買するセカンダリー市場における適正価値の把握、発電事業者へのコンサルティングなど多岐にわたります。太陽光発電所の評価は、発電所が設置されている不動産に係る評価スキル、発電所を構成する機械設備の評価スキル、事業収支の分析スキル、これら全てが求められる固定資産です。

太陽光発電所の評価、メガソーラーの評価が必要な場合は、資産評価の専門家である弊社所属のASA国際資産評価士にご相談ください。

2015.11.04

在庫の評価

企業が保有している固定資産のうち棚卸資産に分類される、原材料・仕掛品・半製品・製品・商品などの資産を在庫といいます。在庫の評価はこれら棚卸資産の公正市場価値、任意清算価値、強制清算価値を求める評価をいいます。

在庫の評価が必要になる局面としては、ABL(売掛債権・動産担保融資)における担保価値の算定目的が最も多く、そのほかでは企業再生やM&Aの局面などでも在庫評価を行うことがあります。

在庫評価の大きな特徴に、取引レベルという概念があります。電化製品を例にしてご説明します。評価対象となる企業が、〇〇電気や〇〇カメラのように最終消費者へ電化製品を販売する企業の場合は、在庫の公正市場価値は皆様が購入される価格とイコールです。

○○電機や〇〇カメラに当該製品を卸している企業が評価対象の場合は、在庫の公正市場価値は〇〇電気や〇〇カメラへ当該企業が販売している卸価格となります。電化製品を製造している企業が評価対象の場合は、電化製品(完成品)の公正市場価値は当該メーカーから卸会社へ販売する価格になります。同じ電化製品でも、評価対象となる企業がどの取引レベルにある企業かによって、公正市場価値も変化していくのが在庫評価の大きな特徴というわけです。

在庫評価では、その企業の在庫管理体制や在庫の保管状況がその価値を大きく左右します。在庫の管理から入出荷までを最新の物流倉庫などにアウトソーシングしているケースもあれば、老朽化した自社倉庫で管理も行き届いていない状況下でアナログ管理しているケースまで、企業の在庫管理状況には大きな差があります。どちらの評価が高くなるかはご説明しなくてもおわかりになるでしょう。

在庫の評価は、機械設備の評価とその性格を異にするため、ASA(米国鑑定士協会)ではME206という専門講座が用意されています。弊社ではME206を修了したASA国際資産評価士が在庫評価を担ております。在庫評価が必要な場合には、資産評価の専門家である弊社所属のASA国際資産評価士にご相談ください。

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