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2015.11.18

機械設備の評価~減価償却制度見直しの動き~

企業が機械装置を取得した場合、取得に要した費用を経費(減価償却費)として計上する主な方法としては、定額法と定率法の2つの方法があげられます。定額法は機械ごとに決まった耐用年数で、毎年同じ額を減価償却費として計上する方法で、法人税負担への影響も一定です。一方、定率法は費用計上していない残高に応じて毎年一定の割合で減価償却費を計上していく方法で、購入直後の法人税負担を軽くすることができます。

政府は、この減価償却制度の見直し(定率法の縮小・廃止をする案)を昨年から検討しております。その理由としては、初期の償却額が大きい定率法は所得操作の可能性を大きくする、IFRSの導入やグループ内会計の統一化を背景に償却制度を定額法に見直す動きが見られる、ドイツでは2008年法人税改革において定率法を廃止し定額法に一本化した、などがあげられています。

IFRS(国際財務報告基準)においては、減価償却の方法として、定額法、定率法、生産高比例法があげられていますが、方法の決定に当たっては、資産の将来の経済的便益が企業によって消費されると予測されるパターンを反映するものでなければならないとされています。したがって、初期に経済的便益が大きく消費されるような機械装置であれば、定率法を適用することはOKですが、多くの機械装置はそれに当てはまらないため、定額法を適用するケースが圧倒的に多いのです。IFRSが資産・負債アプローチに立脚した会計基準であることを考えれば、この決定方法の考え方は納得できます。

上記の見直し理由の一つに挙げられている、IFRS導入による定額法へ見直す動きは、IFRS適用企業の増加を受けて、財務上の要請から償却方法を見直す企業が増加していることを意味しているのです。

では、機械装置の評価、機械装置の公正市場価値の観点から、どちらの方法が望ましいかといえば、IFRSの考え方通りで、多くの場合は定率法よりは定額法ということになります。

但し、償却方法を定額法に変更しただけでは、公正市場価値の観点からはまだまだ不十分です。IFRSではそもそも耐用年数を使用が見込まれる期間で決定することを求めています。日本の税法では法定耐用年数(実際の使用年数よりも短いことが多い)が定められており、日本の会計基準も事実上税法に従うケースが多い状況です。償却方法がより現実の価値減少に類似する方法に変更されたからといっても、その基となる償却期間が法定耐用年数である限りは、帳簿価格が公正市場価値に近い数字を示しているとはいえません。

機械装置の価値を簿価で代用することが慣習的に行われてきた日本においては、機械装置の公正市場価値に関する認識が希薄であり、世界基準で見るとこの分野では完全な後進国であることは認めざるを得ません。

機械装置の評価が必要な場合、機械装置の公正市場価値を把握したい場合には、グローバルスタンダードな資産評価の専門家である弊社所属のASA国際資産評価士にご相談ください。

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