機械・設備・在庫の評価ニーズ
国内における専門家の不在
日本では、土地・建物等の不動産の鑑定評価については「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき、「不動産鑑定士」という国家資格が制度化されています。一方で、機械・設備・在庫等の動産については公的な資格制度は存在せず、専門の評価人が不在であることなどから、税務・会計上の簿価による処理が一般的となっております。
税務・会計上の簿価≠時価
税務・会計上の簿価は、資産の取得に要した支出を減価償却(法定耐用年数で費用配分)した結果に過ぎず、機械・設備の時価を表示したものではありません。税務上の法定耐用年数は実際の機械・設備の使用可能年数より短く設定されている場合が多く、償却方法も価値の減価とは因果関係のない定率法が多く用いられています。また、メンテナンスの良否・技術革新・経済的要因の影響などはそもそも簿価には反映されていません。
そのため、機械・設備を時価評価した結果、簿価を上回る価値を見出すことが可能となり、「売却価格の適正化」や「資金調達枠の拡大」・「のれんの圧縮」などのメリットを享受できる可能性があります。また、技術革新や陳腐化が著しい機械・設備については、簿価を下回る価値しか見出せないこともあり、その場合は「減損会計における損失額の計上」などに繋がることもあります。
世界で活躍する機械設備等の評価人
世界では、機械・設備・在庫等の動産を評価する職業専門家は多数存在しており、こうした資産評価のインフラが多くの国では既に形成されております。なかでも機械・設備の評価においては、ASA(米国鑑定士協会)の有資格者がグローバルに認知された権威ある専門家の証とされています。
国内における機械設備等の動産評価ニーズの高まり
日本でも企業活動のグローバル化が急速に進む中で、保有資産の減損会計、IFRS(国際財務報告基準)適用企業の増加、M&Aにおける取得原価配分(PPA)等、会計の時価主義への流れは確実に進んでいます。また、企業の新たな資金調達の方法として、ABL(動産・売掛金担保融資)が国をあげて推進されるなど、企業資産の大きな部分を占める機械・設備、在庫の評価のニーズは急速に高まっています。
最近では、公共事業におけるコンセッション方式の導入、ヘルスケアや公共インフラを対象としたリート市場が創設される等、機械設・備等の有形固定資産を含む事業評価の分野も大いに注目されるところです。