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2016.03.07
IFRS(国際会計基準)導入企業の増加と動産評価
日本取引所グループによると、平成28年2月現在、IFRS(国際会計基準)を導入又は導入を決定した企業は102社となり、導入から約6年で100社の大台を突破しました。日本の会計基準には、日本基準、米国会計基準、IFRS(国際会計基準)の3つがあります。日本の上場企業の9割超は日本基準を採用していますが、商社・医薬品・サービス業などグローバルに事業を展開する業界では、IFRSを採用する企業が増えているようです。一方で、電力や銀行などグローバル化が遅れがちな業界では、採用企業がまだ1社もありません。
IFRSが採用している『資産負債アプローチ』は、財務諸表の中で貸借対照表(BS)に重きを置く考え方で、いつでも解散価値(会社の売却価格)が算定されることを前提としたものです。対して、日本基準は『収益費用アプローチ』を採用しています。こちらは、損益計算書(PL)に重きを置く考え方で、企業が半永久的に継続されることを前提としています。このように会社の売却価格算定を目的とするIFRSでは、BSの時価評価の手続きこそが会計の役割の中心となります。しかし、日本基準においては会社の継続性を前提とした会計のため、実現可能性の評価損益の測定に過ぎない時価会計は、売買目的資産を除き重要視されていないのです。
IFRSにおける有形固定資産の評価方法は、企業が会計方針として、原価モデルまたは再評価モデルを選択し、当該方針を同じ種類の有形固定資産全体に適用しなければならないとされています(IAS16.29)。
原価モデルとは、有形固定資産項目を、取得原価から減価償却累計額および減損損失累計額を控除した価額で計上する方法です(IAS16.30)。
再評価モデルとは、再評価実施日に公正価値にて計上し、その後は再評価額をもとに減価償却を実施する評価方法です(IAS16.31)。この場合における再評価実施日は、保有する有形固定資産の公正価値の価格変動に依存し、帳簿価額が期末日における公正価値と大きく異ならないように十分な頻度をもって行う必要があります。また、再評価を実施したことによるプラスの評価差額は、「その他の包括利益」として株主資本の部に計上し(IAS16.39)、マイナスの評価差額は費用として認識することになります(IAS16.40)。
一方、日本基準における有形固定資産の評価方法では、再評価モデルは認められておらず、原価モデルのみが採用されています。このため、日本基準を採用している企業は、有形固定資産の時価評価を行う機会は、減損損失など一部のケースを除き、殆どありません。
IFRS適用企業の増加とともに、有形固定資産の評価の必要性は我が国でも認識されつつあります。弊社が提供するグローバルスタンダードな資産評価が、わが国における資産評価の発展・定着に貢献できるように、今後も鋭意努力していきたいと思います。